この気持ちは、誰にも知られてはならない。
だからせめて、お前を想って踊ろう。
――昭和十六年。
留学帰りの御曹司・颯太朗には、ずっと気がかりだったことがあった。
それは、子どもの頃、幼なじみで踊り手の春臣に「お前の踊りなんか嫌いだ」と言ってしまったこと。
ちょっとした意地からだったが、あの時のことを謝ろうと春臣を訪ねるも、頑なに避けられてしまう。
それには、別の理由があるようで……。
好きな人と結ばれることが難しかった時代。
必死に恋心を隠す、幼なじみ再会・恋愛譚。